辻󠄀水産株式会社(宇和島市)

労働人口の壁を越えるために──地元企業が選ぶ外国人材という選択肢

宇和島市にある水産会社「辻󠄀水産株式会社」では、2019年より外国人職員を採用しています。人事法務部の大川次長、営業本部の三上次長、家藤係長と2名の外国人職員(それぞれミャンマーとカンボジア出身)の取材から、水産加工の現場で進む多国籍化のいまを探ります。

1.外国人材雇用に至った経緯

2018年ごろ、工場拡大の話が持ち上がったタイミングで、最初に課題となったのが「労働力の確保」でした。
工場のある愛媛県宇和島市とその周辺地域は高齢化が進み、働き手の母数がそもそも多くありません。
従業員募集をしても応募が少なく、思うように人材を確保できない状況が続いていました。
そんなとき、人材紹介会社やニュースなどで耳にする機会が増えたのが「外国人材」というワード。
これから国内でも外国人材の活用が広がっていく兆しを感じ、「私たちも挑戦してみよう」と検討が始まったのがきっかけでした。実際に1期生が着任したのは2019年10月。
まずはベトナムから6名を採用しました。次年度以降の採用については同じ国の出身者同士であれば言語も文化も近く、互いに助け合えるだろうと考え、4期生まではベトナムの方に採用を絞って受け入れてきました。しかし、次第に外国人材間で「日本語が十分でなくても先輩に聞けば業務が進められる」という雰囲気が生まれていたように感じます。このままでは当初目指していた目的から逸れてしまうと考え、学習意欲や主体性をより高められる環境づくりのため、ミャンマー、カンボジア、インドネシア、ネパールと、採用する国籍の幅を広げました。このことにより、共通言語が日本語になり、言語の習得スピードとコミュニケーションの質がアップました。
また、あえて多国籍にすることで日本人社員もそれぞれの国の文化や習慣を尊重し、配慮する空気感も生まれ、良い相乗効果につながっています。

2.外国人材受入に関する課題

一番の課題は、やはり“言葉の壁”です。採用する側である私たちは日本語話者で、他の国の言語には明るくありません。そのため、翻訳アプリを使いながらコミュニケーションを取ってきました。外国人材のみなさんも、現地で日本語学校に通っていたり、来日前に数週間の学習期間を経て着任したりと、日本語を学ぶ機会はあります。とはいえ、習熟度にはどうしても個人差がありました。さらに、水産業ならではの専門用語や、社内独自の言い回しも多く、新しい環境で短期間に多くの情報を理解するのは、決して容易なことではありません。
日本語を習得してもらうことは大前提でありつつ、「私たちも歩み寄れる部分があるのではないか」と考えるようになりました。例えば、漢字にはなるべくふりがなを振って理解を促しています。その他にも、長い文章で指示をすると混乱を招きやすいため、作業指示はなるべく“単語で簡潔に”伝えています。社内でも話し合いを重ねながら、「伝え方は私たち自身がアップデートしていこう」という意識が徐々に根づいてきています。

3.働きやすい環境づくりへの取組みとその成果

外国人材の受入れにあたって、私たちが特に力を入れているのが、日本での生活に馴染んでもらうことです。まず、社宅は出身国ごとに分けて用意しています。地域の方々にも安心していただけるよう、入居前には会社として近隣へご挨拶に伺い、何かあればご連絡をいただけるようお願いするなど、地域との橋渡し役になるよう努めています。

社宅には、家電や日用品など、生活に必要なものを最低限そろえた状態で入居してもらいます。その上で、あとはそれぞれの生活スタイルに合わせて、“自分らしく暮らせる空間”に整えてもらえるようにしています。

そして、正直なところ、外国人材のみなさんが長期間にわたってずっと同じ職場に留まるとは考えていません。入れ替わりは必ず起こるものです。だからこそ、次の職場に移ったときに恥ずかしい思いをしないように、どこへ行っても力を発揮できる人材として育ってほしいという想いがあります。「うちの会社だから」ではなく、「社会に出ても通用する力」を身につけてほしい。その意識を常に持ちながら、日々の教育やサポートに取り組んでいます。

働きやすい環境づくり3つのポイント

  • 社員・地域住民への事前周知
  • 指示はなるべく簡潔に単語で行う
  • 漢字にはふりがなを付けて日本語の習熟度UP

4.外国人材を雇用してよかったと思うこと

今では、外国人材の存在なくして、私たちの事業は成り立たないと言えるほどです。
加工場でも事務所でも、それぞれが得意分野を活かしながら、誠実に、そして熱心に日々の業務に向き合ってくれています。

その姿勢は日本人スタッフにも良い刺激を与えていて、「自分も頑張らないと」「負けていられないな」と、前向きな気持ちに繋がっているのを実感しています。

5.外国籍社員の声

家族のために日本で働きたいと願って来日しましたが、最初の頃は分からないことも多く、不安もたくさんありました。
それでも、日本人スタッフのみなさんが、いつも根気強く、丁寧に説明してくれたおかげで、少しずつ仕事にも生活にも慣れていくことができました。
もっと日本語が上手になりたいと思うようになり、今では特定技能2号を取得し、これからも日本で働き続けたいと考えています。
自分の国にも魚を扱う仕事はありますが、日本で働くことで、より専門的な技術を学ぶことができています。特に、日本の食品衛生の基準の高さはとても参考になっていて、ここで学んだことを将来に活かしたいと思っています。

所在地
〒798-0003 愛媛県宇和島市住吉町3丁目1番1号
従業員数
日本人64名/外国人材25名
創立年
2012年
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